ムンクの叫び本物はどこ?世界に4枚ある真相と現在の展示場所
美術の教科書やパロディ作品でおなじみの名画『叫び』。耳をふさぎ、波打つ風景の中で目を見開く人物の姿は、世界で最も知られたビジュアルの一つです。しかし、美術ファンや旅行者の間でしばしば疑問に上るのが「ムンクの叫びの本物は一体どこにあるのか?」という問いです。
実は、ムンクが遺した『叫び』の「本物」は世界に1枚だけではありません。画家の手によって技法や制作年が異なる4枚のオリジナル作品が制作され、現在もそれぞれ異なる場所で保管・展示されています。本記事では、オスロの主要美術館や個人コレクションに眠る各作品の現在地から、過去に世界を騒然とさせた盗難事件の真相、オークションでの天文学的な落札価格まで、徹底取材をもとに詳しく解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:エドヴァルド・ムンクが生み出した『叫び』のオリジナル(本物)は世界に4枚存在し、技法(テンペラ、パステル、油彩)や色彩がそれぞれ異なる。
- 要点2:主な展示場所はノルウェー・オスロの「ノルウェー国立美術館」と「ムンク美術館」、そして1枚のみが米国の個人所蔵となっている。
- 要点3:過去に2度の白昼堂々の盗難被害に遭うも奇跡的に奪還され、現在は徹底した厳重管理のもとで特別公開されている。
【衝撃の真相】「ムンクの叫び」の本物は世界に4枚存在する!各作品の画材と違い
「世界に1枚しかない最高傑作」と思われがちな『叫び』ですが、近代表現主義の巨匠エドヴァルド・ムンク(1863〜1944)は、同じ構図の作品を生涯にわたって繰り返し制作しました。習作や版画を除くと、ムンク自身の手によるオリジナルのカラー作品は合計4枚が存在します。
ムンクは自身の内面や「生と死、愛と不安」といったテーマを探求する『生命のフリーズ』連作の一環として本作を描きました。同じモチーフを異なる画材で試作・再解釈したため、4枚には明確な違いがあります。
1. 1893年制作(テンペラ・クレヨン画 / 厚紙):
一般に最も知名度が高い「元祖」とされる作品。ノルウェー国立美術館が所蔵しています。空の鮮烈な赤と青いフィヨルドの対比が強烈で、画面左上にはムンク本人の手筆による「狂人にしか描けなかった」という鉛筆の微小な書き込みがあることでも有名です。
2. 1893年制作(パステル画 / 厚紙):
油彩やテンペラ版に先駆けて描かれたとされる初期の習作的パステル画。色彩のタッチが柔らかく、ムンク美術館に所蔵されています。
3. 1895年制作(パステル画 / 厚紙):
4枚の中で最も色彩が鮮やかと評される作品。ムンク自作の詩が刻まれたオリジナルの木製フレームに収められており、唯一の個人所蔵作品となっています。
4. 1910年制作(テンペラ・油彩 / 厚紙):
晩年に近い時期に制作されたバージョンで、全体的に緑や黄色の不気味なトーンが強調されています。人物の目元に瞳が描かれておらず、幽霊のような虚無感が際立つ1枚です。ムンク美術館が所蔵しています。
【2026年最新】本物はどこで見られる?オスロの展示場所と鑑賞ルール
「本物のムンクの叫びをこの目で鑑賞したい」と考えた場合、向かうべき目的地はノルウェーの首都オスロです。現在、一般公開されている3枚の作品はすべてオスロ市内の2大美術館に集中しています。
もっとも象徴的な1893年版のテンペラ画を所蔵しているのが、2022年に新館として生まれ変わったノルウェー国立美術館(Nasjonalmuseet)です。北欧最大の美術館である同館の「ムンク・ルーム」の中央に堂々と展示されており、ガラスケース越しではあるものの、圧倒的な筆致を間近で体感できます。
一方、パステル版(1893年)とテンペラ・油彩版(1910年)、さらに白黒のリトグラフ版を所蔵するのが、ウォーターフロントにそびえるムンク美術館(Munchmuseet)です。
ここで旅行者が注意すべきは、ムンク美術館の特殊な展示ローテーション制度です。紙や段ボールを支持体とするムンクの作品は光に極めて弱いため、同館では「1910年油彩版」「1893年パステル版」「リトグラフ版」の3作品を専用展示室に並べ、1時間ごとに1枚ずつ順番にシャッターを開けて公開するシステムを採用しています。つまり、お目当ての特定バージョンを見るためには、館内でタイミングを待つ必要があります。
過去に起きた2度の「盗難事件」の全貌|映画さながらの強盗劇と奇跡の回収
『叫び』の名声をさらに高めたのが、過去に美術史を揺るがした2件の凶悪な盗難事件です。いずれの事件でも作品は奇跡的に取り戻されましたが、絵画の脆弱性と防犯体制の甘さが世界的な議論を呼びました。
【第1の事件:1994年 ノルウェー国立美術館】
1994年2月12日、リレハンメル冬季オリンピックの開会式当日の朝、警備が手薄になった隙を突いて犯行グループが侵入。梯子を使って窓ガラスを割り、わずか50秒足らずで1893年版の『叫び』を持ち去りました。現場には「お粗末な警備をありがとう」と書かれた絵葉書が残されるという屈辱的な手口でしたが、イギリスの潜入捜査官らの巧みな囮捜査によって約3カ月後に無傷で発見・回収されました。
【第2の事件:2004年 ムンク美術館白昼強盗】
2004年8月22日、白昼の開館時間中に覆面の武装集団が乱入。銃で警備員と来館者を脅迫し、壁に固定されていた1910年版の『叫び』と代表作『マドンナ』を力づくで引き剥がして逃走しました。世界中を震撼させたこの事件から約2年後の2006年8月、警察の特別捜査によって作品は無事押収。湿気による染みや角の擦れなど軽微な損傷が残ったものの、高度な修復作業を経て再びファンの前に姿を現しました。
オークションで約96億円!個人所蔵版『叫び』の驚愕の落札価格と現在
4枚ある『叫び』の中で、唯一美術館ではなく個人の手に渡っているのが1895年制作のパステル画バージョンです。
この作品はもともと、ムンクの友人でありパトロンでもあったノルウェーの実業家トーマス・オルセン氏の遺族が長年保管していました。しかし2012年5月、ニューヨークのサザビーズで開催された名匠美術オークションに出品されると、世界中の富豪による熾烈な入札合戦が勃発。
最終的な落札価格は、当時の美術品オークション史上最高額となる1億1,992万2,500ドル(当時の為替レートで約96億円)に達しました。落札したのは、米国の著名な投資家で大富豪のレオン・ブラック氏です。
この個人所蔵版は現在、普段は非公開となっていますが、過去にはニューヨーク近代美術館(MoMA)やノイエ・ギャラリーなどに期間限定で特別貸出された実績があります。公の場に姿を現すたびに大行列を生む、幻の至宝となっています。
「叫んでいる」わけではない?作品に込められた本当の意味と描かれた背景
『叫び』を鑑賞する上で、多くの人が誤解している最大のポイントがあります。それは、中央の人物自身が金切り声を上げているわけではないという点です。
ムンクが1892年に書き残した日記には、この絵を着想した強烈な原体験が克明に記されています。
「私は2人の友人と道を歩いていた。日が沈み、突然空が血のように赤く染まった。私は立ち止まり、疲れ果てて柵に寄りかかった。青黒いフィヨルドと街の上に、炎の舌と血が広がっていた。友人たちは歩き続けたが、私は不安に震えながら佇んでいた。そして――自然をつらぬく無限の叫びを聞いたのだ」
つまり、絵の中の人物は叫んでいるのではなく、自然界から突如として響き渡った圧倒的な「叫び」の気配に恐怖し、両手で耳を塞いで耐えている姿を描いたものなのです。
当時のムンクは精神的な極度の不安や病弱な体質、家族の相次ぐ死(母と姉の結核死、妹の精神疾患)に苛まれていました。夕暮れの空が異常な赤色に見えた現象は、1883年のインドネシア・クラカタウ火山大噴火による火山灰がもたらした異常夕焼けの影響とも言われていますが、ムンクの内面にあった実存的な恐怖と絶望が見事にキャンバスへ定着された結果といえます。
日本で本物を見るチャンスは?過去の来日展示歴と今後の可能性
「日本国内の美術館で本物の『叫び』を見ることはできるのか?」という点について、結論から言うと、日本国内に常設展示されている『叫び』の本物(オリジナル4点)は存在しません。
しかし、過去の大規模回顧展で来日を果たした歴史があります。記憶に新しいのは、2018年秋から2019年年明けにかけて東京都美術館で開催された『ムンク展―共鳴する魂の叫び』です。この展覧会では、オスロのムンク美術館から1910年版のテンペラ・油彩画が初来日し、連日長蛇の列ができる歴史的な大ヒットを記録しました。
ただし、今後の再来日については極めてハードルが高いのが現状です。前述の通り作品自体の経年劣化が進んでおり、油彩・パステルともに光や輸送時の振動に非常に弱い状態にあります。ノルウェー国外への貸し出し基準は年々厳格化しており、オスロ現地へ足を運ぶのが最も確実な鑑賞手段となっています。
【ムンクの叫び 本物】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:絵の上にある「狂人にしか描けない」という落書きは誰が書いたのですか?
A1:かつては鑑賞者によるいたずらと推測されていましたが、2021年にノルウェー国立美術館が行った赤外線スキャンと筆跡鑑定により、ムンク本人が自ら書き込んだものであることが正式に証明されました。初公開時に批評家から「精神異常者の絵だ」と激しく攻撃されたことに傷ついたムンクが、皮肉を込めて後から書き足したと考えられています。
Q2:オスロの美術館に行けば、いつでも確実に『叫び』を見られますか?
A2:ノルウェー国立美術館の1893年版は常設展示室で基本的にいつでも鑑賞可能です。一方、ムンク美術館では作品保護のため、1時間ごとに展示作品(油彩版・パステル版・リトグラフ版)を交代させる方式を取っています。少し滞在時間を長めに確保して鑑賞に臨むことをおすすめします。
Q3:版画(リトグラフ)の『叫び』も「本物」と呼べるのでしょうか?
A3:ムンクは1895年に白黒のリトグラフ(石版画)を自ら制作し、数十枚を刷りました。これらもムンク自身が監修・制作した正真正銘のオリジナル版画であり、美術市場では数億円規模で取引される貴重な美術品です。世界各地の美術館(日本の国立西洋美術館など)に収蔵されているのは、このリトグラフ版です。
まとめ:世界を震撼させ続ける近代絵画の至宝
『叫び』の「本物」は、1枚の絵画にとどまらず、エドヴァルド・ムンクの葛藤と芸術的実験が凝縮された4枚のバリエーションとして今も生き続けています。ノルウェー国立美術館、ムンク美術館、そしてニューヨークの個人コレクション――それぞれが異なる画材と表情を持ち、盗難や劣化の危機を乗り越えて現在まで受け継がれてきました。
自然界の叫びにおののき、耳をふさぐあの独特なシルエット。もし北欧ノルウェーを訪れる機会があれば、オスロの地で100年以上前のムンクの魂の叫びに直接触れてみてはいかがでしょうか。 (出典: ムンク の 叫び 本物(Yahoo!ニュース))